草原


彼女は、草原の中にいた。
青空の下の、草原。
僕はそれを、遠くから見つめていた。
美しい。そう、思った。
具体的にどのように美しいか、と聞かれても、分からない。
ただ、美しい。

少女が、振り向いた。
「なにか、用?」
そのそっけない口調も、魅力的だ。
僕は、特に何かあったわけではないので「別に」とだけ、答えた。
「なら、どうしてこっちを見るの?」
「僕が見たい方向に、たまたま君がいただけだ」

夕暮れ。視界が橙色に染まる。
少女は、そして僕もまだ、そこにいた。
夕日を、彼女は眩しそうに、額に手を当てて見つめていた。
「……綺麗ね」
「うん、そうだね」
本当に、綺麗だった。